PARC TOP「魚が食べられなくなる?〜漁業と流通、消費を問い直す〜」のおしらせ



COP10 100日前緊急イベント 海の生物多様性を考える
スウェーデン環境党・欧州議会議員 『沈黙の海』著者
イサベラ・ロヴィーンさん来日シンポジウム

魚が食べられなくなる?
〜漁業と流通、消費を問い直す〜

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【報告】シンポジウムのビデオ

【報告】当日のパワーポイントと配付資料

【報告】開催報告



日時:7月3日(土) 13:00〜17:20(予定)

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス 南館地下4階ディスタンスラーニングルーム 地図はこちら

参加費:無料

申込み:7月2日までに@お名前Aご所属Bご連絡先(メールアドレスあるいは電話番号)を明記の上sakana0703@gmail.com までお申し込みください

共催:EU Studies Institute in Tokyo (EUSI)持続可能なスウェーデン協会グリーンピース・ジャパンアジア太平洋資料センター(PARC)

協賛:パタゴニア日本支社環境・持続社会研究センター(JACSES)、伊藤 康氏、松村寛樹氏

協力:地球・人間環境フォーラム



開催にあたって

プログラム

スピーカー紹介

上映作品紹介

ご協賛のお願い



開催にあたって

魚や貝、海藻など、海からもたらされる恵みは、古くから私たちの食卓を支えてきました。しかし、こうした水産資源が枯渇しつつあることが世界中で懸念されています。本来、これらの資源は自然の営みの中で子孫を残し、再生産し続けます。しかし、その力を超えるほどの量が獲られ続けてきました。同様に魚や貝が生育できる環境も失われています。

国連食糧農業機関は、世界の水産資源の4分の3が限界まで獲られてしまっていると警告、2015年に不足する魚介類の量は世界でおよそ1,100万トンと予想しています。これは、日本で1年間に消費する魚介類とほぼ同量です。

実際にこれだけの魚介類が不足すれば、価格の高騰は避けられません。タンパク質を魚介類に依存する世界の貧困層への影響は深刻ですし、日本の食卓にとっても人ごとではありません。

  2010年10月、名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催されます。私たちの暮らしを支える豊かな生態系を保全し、将来にわたって利用し続けていくために、締結国が話し合います。

  その100日前にあたる7月3日(土)に、スウェーデンから、ヨーロッパの資源枯渇を告発したジャーナリストであり、現在は欧州議会議員として水産行政の改革に関わっているイサベラ・ロヴィーンさんをお迎えし、「魚を食べ続けていくために」という視点から海の生物多様性を考えるシンポジウムを企画しました。

クロマグロの禁輸が話題になり、水産資源の枯渇が懸念されていることは身近な話題になりつつあります。しかし、どのような生産・流通・消費構造の中でそうした状況が起こっているのかということはあまり知られていません。

本シンポジウムでは、この点にもスポットをあて、私たちの画一的な消費のあり方自体が、乱獲や環境に負荷をかけるような養殖に結びついていることを明らかにしていきます。
また、持続可能な漁業を行なう事例も紹介しながら、そうした漁業を支える「持続可能な水産物消費」についても考えます。

プログラム(予定)

12:30 開場

13:00 あいさつ 田中俊郎氏(慶應義塾大学/EUSI所長)

13:05 イサベラ・ロヴィーン氏講演(逐次通訳)
     「水産資源は急速に枯渇している〜EUの事例から」

14:05 勝川俊雄氏(三重大学)講演
     「日本の漁業管理の現状と課題」

14:20 アジア太平洋資料センター制作DVD上映
     「食べるためのマグロ、売るためのマグロ」

14:55 花岡和佳男氏(グリーンピース・ジャパン)講演
     「水産物流通の現状と問題点」

15:25 アジア太平洋資料センター制作DVD上映
     「食卓と海 水産資源を活かし、守る」

16:00 大野一敏氏(船橋市漁業協同組合)講演
     「漁業から見る海洋環境保全の必要性」

16:15 パネルディスカッション
     「いかに管理し、いかに食べるか」 モデレーター:井田徹治氏(共同通信社)
「いかに管理し」では、EU、日本、国際的な水産資源管理の現状と課題、海洋環境保全の必要性、海洋保護区などについて、「いかに食べるか」では、消費者に対してどう魚を食べるのかということ(日本の水産物輸入によってどんな影響が起きているのか、翻って地場の漁業者が獲った魚の市場が奪われてしまっているのではないかなど)を議論します。

17:15 あいさつ

17:20 終了予定


スピーカー、モデレーター紹介

■Isabella Lovin (イサベラ・ロヴィーン)
 スウェーデン環境党・欧州議会議員

1963年生まれ、ストックホルム在住。消費者・食・環境の問題を専門に扱うジャーナリストとして活躍。2007年夏にスウェーデンにて出版した『沈黙の海 − 最後の食用魚を追い求めて』では、乱獲によってスウェーデン近海やヨーロッパ・世界における水産資源が枯渇に瀕していることに警鐘をならし、人々の関心を大きく高めることとなった。2007年ジャーナリスト大賞、2007年環境ジャーナリスト賞を受賞。2009年6月の欧州議会選挙に環境党から立候補し当選。

■勝川俊雄 (かつかわ・としお)
 三重大学生物資源学部准教授

1972年、東京生まれ。東京大学農学生命科学研究科にて博士号取得した後、東京大学海洋研究所助教を経て、現職。研究テーマは、水産資源を持続的に利用するための資源管理戦略の研究、希少生物保全のための持続性の評価など多岐にわたる。現在は、ノルウェー、ニュージーランド、オーストラリア、米国などの漁業の現場を周り、世界各国の資源管理制度の比較研究に力を入れている。業界紙、ブログなど様々なメディアで、日本の漁業改革の議論をリードしてきた。日本水産学会論文賞、日本水産学会奨励賞を受賞。

■花岡和佳男(はなおか・わかお)
 国際環境NGO グリーンピース・ジャパン 海洋生態系問題担当

2000年から2002年までアメリカ・フロリダでマナティーやウミガメの保護活動に参加し、その後マレーシアにてマングローブを伐採しないエビの養殖施設の立ち上げに貢献。2007年よりグリーンピース・ジャパンに所属し、沖縄ジュゴン、違法漁業、捕鯨、過剰漁業といった海の生物多様性を守るキャンペーンを展開している。2008年の国際捕鯨委員会(IWC)では、約30年ぶりに会場内でのNGOに発言権が与えられ、30を超えるNGOの代表としてスピーチを行い、各国政府に実質商業捕鯨の中止を訴えた。国内では現在、太平洋クロマグロの過剰漁業を問題視し、漁港や市場などを巡り調査を行ったり、過剰漁業や漁業管理についてのシンポジウムを開催するなどして、海洋保護区の設立に向けた活動に注力している。

■大野一敏(おおの・かずとし)
 船橋市漁業協同組合代表理事組合長

江戸時代から続く網元の家に生まれ、60年にわたり東京湾で漁業を営む。経済成長の中で海の環境が変化することに危機感を覚え、サンフランシスコ湾保全運動などを研究。湾はかけがえのない天然資源であるという信念のもと、埋め立て反対運動などを通し、東京湾最奧に残された干潟、三番瀬の保全に関わる。著書に『東京湾で魚を追う』。

■井田徹治(いだ・てつじ)
 共同通信科学部編集委員

1959年12月東京生まれ。1983年、東京大学文学部卒、共同通信社に入社。1991年、本社科学部記者。2001年から2004年まで、ワシントン支局特派員(科学担当)。現在、同社編集委員。環境と開発の問題を長く取材、気候変動に関する政府間パネル総会、気候変動枠組み条約締約国会議、ワシントン条約締約国会議、環境・開発サミット(ヨハネスブルグ)、国際捕鯨委員会総会など多くの国際会議も取材している。著書に「サバがトロより高くなる日 危機に立つ世界の漁業資源」(講談社現代新書)、「ウナギ 地球環境を語る魚」(岩波新書)、「生物多様性とは何か」(岩波新書)など。


上映作品紹介

「食べるためのマグロ、売るためのマグロ」2008年 31分
マグロを切り口に、グローバルなフードビジネスが私たちの食卓や環境に与えている影響を探り、「マグロが食べられなくなる」ような状況が生み出された背景に迫る。

「食卓と海 水産資源を活かし、守る」2009年 34分
マグロだけでなく水産資源全体の枯渇が世界的に懸念される中、資源を利用しながら保全するコミュニティの実践を追う。「持続可能」な漁業のあり方を考えると同時に、海の恵みを長く楽しむための「食べ方」を考える。



当日のパワーポイントと配付資料

■イサベラ・ロヴィーン氏「水産資源は急速に枯渇している〜EUの事例から」

■勝川俊雄氏「日本の漁業管理の現状と課題」

■花岡和佳男氏講演「水産物流通の現状と問題点」

■大野一敏氏「漁業から見る海洋環境保全の必要性」

■パネルディスカッション「いかに管理し、いかに食べるか」 モデレーター:井田徹治氏(共同通信社)



開催報告

■来場者人数:約150名
■来場者所属:水産研究・関連機関/漁業・水産業者/NGO・市民団体/行政関係者/消費者団体/企業/メディア/研究者/学生 など

■全体概要
本シンポジウムでは、スピーカー4人による講演、ビデオ2作品の上映、スピーカー同士および会場を交えてのパネルディスカッションが行なわれた。スピーカーは、それぞれの立場から水産資源の枯渇の現状とその原因を指摘。同時に全員がそれぞれ解決策を提示した。
パネルでは、そうした解決策をどうしたら実行できるかが話し合われた。さまざまなステークホルダーの中でも、NGO、消費者、研究者、メディアなど市民社会の果たしうる役割が活発に議論された。議員、研究者、NGO、漁業者という多彩なパネリストが、協働のために何ができるかを議論した。
さまざまなステークホルダーが参加者として参加していたため、会場との議論も盛り上がり、パネルは30分以上も予定を延長して続いた。
海洋の生物多様性保全に向けた、市民社会の新しい動きの可能性が感じられるようなシンポジウムとなった。

■講演概要
イサベラ・ロヴィーン氏(スウェーデン環境党・欧州議会議員)
「水産資源は急速に枯渇している〜EUの事例」

同一の港で獲れたサカナのサイズを1950年代・1980年代・2000年代で比較する、レッドリストに入っている魚の名前を並べるなど、視覚的に漁業資源枯渇の実態を伝えた。また、タラの個体群崩壊の具体例から、水産行政の無対策、海洋生物量の世界的な減少、漁獲対象魚種の変遷と乱獲の連鎖を伝えた。さらに、特定の魚種の急増や消滅が、海洋のエコシステムのバランスを壊すこと、1度エコシステムが破壊されてしまうと、禁漁をしたとしても生物の復活は難しいことが、バルト海を例に説明された。その他、沿岸生態系による二酸化炭素の吸収量など、エコシステムの多面的な機能も紹介された。 対策としては、「漁業」を環境問題として認識し、包括的な政策を行なうこと、漁業助成金を問い直すこと、消費者としてそうした規制に圧力を掛けていくことなどが話された。 実際に彼女の著作が出版されたことで、スウェーデンではこの問題が大きな注目を集め、エコラベルの普及が進むなど具体的な効果が上がっている。この経験を踏まえ、世論を高めていくことが、問題解決につながるということも提示された。

勝川俊雄氏(三重大学生物資源学部准教授)
「日本の漁業管理の現状と課題」

「魚離れ」を懸念し、「消費の拡大」を訴える国内のメディアと、「資源枯渇」を懸念し、「消費の減少」を訴える海外のメディアとの比較から講演がスタート。具体的なデータから、日本の漁獲量の減少および国内漁業資源の減少が指摘された。その背景として、漁獲枠が設定されている魚種は7種に過ぎないこと、漁獲枠自体が過剰に設定されていること、漁獲枠に強制力も罰則もないことなど、日本漁業はほとんど管理されていないことが説明された。これによって、漁獲圧上昇→資源減少→収益悪化→漁獲圧上昇という、漁業を崩壊させるような乱獲スパイラルが起こっていると指摘。クロマグロを例に、未成熟魚の漁獲を規制することで、漁獲金額も漁獲量も増やすことができる具体的な試算を発表。加えて、未成熟魚が成熟するまでの間、現在その6割が土木工事に使われている水産予算によって漁業者の生活保障をすることが提案された。自国でほぼ無規制に漁獲しながら、さらに外国における漁獲を要求している現在の日本の姿勢を問い、まずは自国の資源管理に取り組むべきと強く提言した。さらに、漁業者とともに行なった政策提言活動の成果も伝え、日本漁業を変えていくために市民目線で政策立案できる研究NGOの必要性を訴えた。

花岡和佳男氏(国際環境NGO グリーンピース・ジャパン 海洋生態系問題担当)
「水産物流通の現状と問題点」

漁業が産業化した1900年代後半から乱獲が進んだ説明から講演がスタート。世界的にも日本国内でも漁業資源の枯渇が進んでいること、漁業管理期間の「管理」が実質的に効果を持っていないことが話された。 それにもかかわらず、なぜスーパーには水産物が溢れているのはなぜなのか、と言う切り口から、チェーンの小売店・飲食店による効率性を重視する画一的な流通、販売形態が大規模で破壊的な漁業・養殖業を後押ししていることを訴えた。さらに、そうした販売による価格決定や水産物の大規模輸入の実態も説明。これにより地域の漁業が衰退していると指摘した。 消費者としては、水産物に対する情報を集め購入時の判断基準にすることが提案され、さらに国際的には、海洋保護区の設定などストックを冷蔵庫ではなく海の中に持つことで水産資源の再生産を促す(魚が生まれ、育ち、産卵する)ような体制作りを進める重要性が話された。

大野一敏氏(船橋市漁業共同組合組合長)
「漁業から見る海洋環境保全の必要性」

漁業資源管理の前に、沿岸域の環境保全がまず必要であるというお話しから講演をスタート。アサリやベントスなど、沿岸の食物連鎖を支える小動物の宝庫である沿岸域や河口域を、戦後日本が埋め立て続けてきたことを指摘。乱獲だけではなく、こうした沿岸行きの機能に対する無知が引き起こした埋め立てによって世界3大漁場の1つと言われていた日本近海が破壊されてきたことを説明した。さらに、開発や汚染によってとるに足りない海だと思われがちな東京湾の力を強調。冷蔵庫からではなく、地元の海からの魚を食べることの意味を伝えた。また、漁業者が国の施策に翻弄されてきたことも指摘。漁業の現場からの実感がこもった力強い講演であった。パネルの中で語られた埋め立ての環境影響についてのお話(湾の場合、流れ出す潮流が弱まり、海底にヘドロがたまり、地つきの魚が生きられないことなど)もとても具体的で、市民が海を知り、その環境保全に関わることの重要さが強調された。

パネルディスカッション モデレーター:井田徹治氏(共同通信社)
「いかに管理し、いかに食べるか」

このテーマについて市民社会が果たしうる役割−外から政策や漁業に文句を言うのではなく、消費を変えたり、漁業者や専門家とともに考え、政策づくりにその考えを反映させていく−が議論された。会場からの質疑応答も交え、CBD COP10に向けて、海の食物連鎖への理解が深まるような内容となった。自然界の成り立ちを知り、その仕組みとバランスを保全することの重要性がよく伝わった。



ご協賛のお願い

このシンポジウムは、ご協賛いただける方/団体を募っています。
ご協賛くださる方は、sakana0703@gmail.comまでご一報の上、下記口座へ協賛金をお振込みください。

【個人】 協賛金 1口 2,000 円(1口以上何口でも可)
【団体】 協賛金 1口 10,000 円(1口以上何口でも可)

【お振込先口座】
三井住友銀行神田支店 普通預金 7962767
口座名義:特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター

*お振り込みの際は、お名前の前に0703をつけてください。

協賛いただいた方、団体のお名前は、当日の配付資料に記載いたします。
ぜひどうぞよろしくお願い申し上げます。

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