ドキュメンタリー映画『fire in the blood』は、2013年にインドで製作された作品です。監督のディラン・モハン・グレイ氏はこれまでも数々の社会派ドキュメンタリーを製作してきました。
アフリカ諸国はじめ世界でHIV/エイズに苦しむ数千万の人々−。1996年に抗レトロウィルス治療薬が開発されると、欧米の先進国では一気にエイズ治療への希望が開けました。しかし貧困国では高額な薬は手に入りません。安価なジェネリック医薬品は製薬企業の特許権によって独占され、製造も輸入も禁止されていました。「命を守るのになぜ特権が必要なのか?」「薬の本当のコストは?」「欧米社会はなぜアフリカを見殺しにするのか?」。映画では特許の壁を破り、途上国に安価なジェネリック医薬品を届けようと医師や活動家、製薬会社などが奔走します。
根本的な問題は、欧米諸国の政府と企業が一体となって進めてきた自由貿易推進の流れです。WTOやTPP、TiSA、RCEPなどの貿易協定の中で、医薬品の特許権はどんどん強化されようとしていることに、国際市民社会は懸念の声をあげています。
薬は誰のものか――。
貧富の格差が、医薬品アクセスの格差につながることを、私たちは見過ごしていいのでしょうか?
大企業の薬の特許や現在の貿易や経済のあり方は、本当に私たちを幸せにするのでしょうか?
映画は多くのことを私たちに問いかけています。