広い国土を有するタイは、地域によって様々な顔を持つ。北部には国内最高峰のドーイ・インタノンを含む山岳地帯が、中・東部には豊かな稲作地帯、チャオプラヤー・デルタが広がり、そしてマレー半島地域は、海に囲まれ豊富な海産資源に恵まれている。しかし、八〇年代以降のすさまじい経済成長に伴い、タイの自然環境は目に見えて悪化した。さらに環境保全を求める国際的な声が高まると、タイ政府は、人と自然の昔ながらの繋がりを無視した「新しい」環境保全政策を推進し始めた。自然と共に暮らす人びとは、そうした急激な変化がもたらす自然と生活へのプレッシャーを肌で感じ、人と自然との調和を基盤とした環境保全を提案してきた。 そして今、タクシン退陣を求める市民運動が爆発的に発生している。タイで何が起こっているのか。そして、タクシン政権の資源保全政策と、住民主体の取り組みの間で、どのような摩擦がおきているのか。